最近、自己破産や個人再生の申し立てをしたいが車を残したいというご相談の方が多いです。
この問題については、自己破産と個人再生でわけて考える必要があります。また車のローンが残っているか否かでも分けて考える必要があります。
自己破産は原則全ての財産を処分して残った借金の免除を求める手続きですので、車も処分する必要があります。しかし車の時価が20万円以下の場合は、例外的に車を残すことができます。車の処分には、費用がかかるため市場価値が20万円以下の場合は売却できたとしても債権者に分配する財産がほとんど期待できないためです。
車のローンが残っている場合は、車の名義がローン会社に残っている場合と、自己破産の申し立てをされる方に名義が移転している場合にわけて考えるひつようがあります。
(1)ローン会社に名義が残っている場合
ローン会社は、自己破産等をされたときに備えて車の名義を自社の名義に残しておくことがよくあります。このようにしておけばいざというときに所有権に基づいて車を引き上げる事で債権の回収を図ることができるからです。また車を残すため、ローンの支払いを継続することはできません。なぜなら一部の債権者のみ支払いをすることは偏頗弁済といって、債権者平等の原則に反する行為だからです。
もっとも保証人がいる場合に当該保証人が支払いを継続することは差し支えありません。親族が保証人の場合は実質的に破産者が返済しているとあとで裁判所に指摘されないように、保証人自信が保証人の資金で返済する必要があります。保証人がいない場合でも親族等の第三者が返済をすることは可能です。しかし、保証人と異なり法律上の利害関係がないので返済するためにはローン会社の同意が必要となります(民法474条2項)
(2)ローン会社に名義が残っていない場合
自己破産を申請する方に名義は移っているものの、ローンは完済していないという場合もまれにですがあります。この場合はローン会社は車を担保に取っていない単なる一般債権者にすぎないため1、のローンが残っていない場合と同様の処理になります。そのたえ、車の資産価値が20万円以下の場合は処分せずに車を保有し続けることができます。
個人再生は自己破産と異なり、清算手続きではないため、自己の財産も全て残せるのが原則です。そのため車も処分する必要がありません。もっとも清算価値保証原則といって個人再生により今後債権者に返済していく最低弁済額は資産の総額を下回る事ができません。例えば借金の総額が500万円の場合、個人再生で5分の1の100万円まで借金が圧縮されるのが原則です。しかし車の時価が150万円の場合、最低弁済額は150万円となります。財産があるのに借金が財産より減るのはおかしいからです。そのため車の価値が高い場合は個人再生を申し立てしても5分の1まで圧縮されず、毎月の返済額が増える方向にいくという意識が必要になります。
この場合は2、と同じで名義の移転の有無や保証人等が支払いを継続していくかでわけて考えます。もっとも個人再生の場合は自己破産と異なり自己の財産は全て残せますので、名義が個人再生を申し立てる方に移転している場合は、たとえ車の価値が20万円を超える場合でも処分する必要がありません。
以上見てきたとおり一定の条件を満たす場合は、自己破産でも個人再生でも車を残せる場合があります。
もっとも車を残せるケースでも本当に車を残した方がいいかは別問題です。まず、個人再生の場合は、債務の額が大幅に圧縮されるものの今後も3年間返済は続きます。自己破産の場合は借金の支払いがなくなりますが、もしもの事に備えて毎月少しずつ貯金できるような家計にすべきです。
車は維持するだけで本当にお金がかかります。毎月のガソリン代や駐車場代、税金、車検代、保険代、減価償却費にどこか壊れたときのメンテ代等。こういった維持費を削減できれば日々の生活は大分楽になるはずです。それだけではありません。車がないということは移動は自転車や徒歩になるので健康にもいいです。そのため長い目で見れば医療費の削減にもつながります。排気ガスを出さないので環境にもいいです。
もっとも、必ず車が必要な方もいらっしゃいます。ご病気や、お仕事で使われる方、公共交通機関がないため移動には車が必要不可欠な方等です。こういった方に関しては、当事務所でも車をなんとか残して債務整理をできないか提案している一方、上記のような事情がなければ、たとえ残せる場合でも債務整理を機会に車を処分することをお勧めしております。
もちろんいつまでもというわけではなく、借金がすべてなくなってある程度貯金ができればまた車を購入することを検討してもいいと思います。どうしても必要なときは、その時だけレンタカーを借りればはるかに経済的です。