自己破産というのは、簡単にいうとすべての借金が免責される債務整理方法です。ここでは、自己破産のデメリットをみていきましょう。人によって事情もそれぞれですので、デメリットと感じるかどうかも人それぞれです。
1.今後5~7年間借入ができない
自己破産をすると、今後5~7年間、クレジットカードを作成したり、ローンを組んだりすることができません。信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に事故情報として掲載されるためです。
これは、自己破産のみならず、個人再生や任意整理等の債務整理の場合も同じです。
2.法律上の資格制限がある
◇公法上の資格制限
弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士、宅地建物取引業者、公安委員会委員、賃金業者、警備業者、警備員などの職業に就くことができません。
申立を行った時点で、その職に就いている方は、資格を失うために一時的に職を失うことになります。
◇私法上の資格制限
代理人、補佐人、補助人、後見監督人などにもなることができません。
また、取締役や監査役に選任されていた場合は、自己破産の開始決定により一度退任する必要があります。
しかし、これらの法律上の制限は、破産手続きを開始してから免責までの間だけです。期間としては、だいたい3~4ヶ月ほどですので、デメリットとして過大視しなくても大丈夫かと思います。
3.住所氏名が官報(かんぽう)に載る
国が発行している官報という政府刊行物に住所氏名が記載されます。自己破産をしたことを他人に知られてしまうのではないか、とご心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、年がら年中官報をすみずみまで見ている人は、そういるものではありません。また、弁護士、司法書士には守秘義務がございますので、公にはなりません。
ですので、ご自身で言い回らなければ、他人に知られることを心配する必要はありません。
4.一定の財産を失う
自己破産をすると、自動車や住宅は手放さなければならないのでしょうか。
< 自動車 >
車を手放さなければならないかどうかは、ローンの支払いが残っているかどうかによって大きく異なります。
車のローンが残っている |
車のローンが残っていない |
車の所有権はローン会社になっているケースがほとんどですので、車はローン会社に引き上げられてしまうのが原則です。 |
裁判所によって市場価値がないと認めれば、車は手放さずに残すことができます。 |
<住宅>
原則として、住宅ローンの有無に関わらず、住宅は価値のあるものとみなされ、競売にかけられてしまいますので、住宅を残すことは難しいといえます。
住宅を残したいとお考えの方は、個人再生という方法があります。個人再生とともに住宅ローンの特則を利用すれば、住宅ローンは今まで通り支払うことでマイホームを守ることができます。
5.管財事件になると手続費用がかかる
自己破産の手続きには、「同時廃止」と「管財」の2種類あります。
<同時廃止事件>
裁判所に破産の申立てをした際に、お金に換えて債権者に配当できるような財産がない場合には、同時廃止事件となります。
<管財事件>
債権者に配当するべき財産がある場合には管財事件となります。破産の開始決定と同時に、財産の処分・管理権が、破産管財人にうつります。破産管財人とは、裁判所によって選任され、破産者の財産をできるだけ有利に売却を行い換価する人のことです。
管財事件になると生じる手続き上のデメリットは以下のようなことです。
・破産管財人と複数回面談を行わなければならない
・予納金以外に費用がかかる(大阪地裁の場合、20万円~50万円。)
・海外渡航等に制限がかかる場合もある
自己破産のデメリットに関するうわさ(デマ)でご心配されている方が、たくさんいらっしゃいます。
たとえば、自己破産すると、選挙権を失う、家具などすべての財産を没収される、などといったことはありません。
上記に記した①~⑤のような一般的に言われているデメリットも、本当にデメリットなのでしょうか。自己破産を行って借金の免責を受け、人生の再スタートをきっている方が大勢いらっしゃいます。
ご自身にとって、なにがデメリットとなるのかよく見極めていただきたいと思います。
一方、任意整理や個人再生など他の債務整理方法と異なり、借金を返済せずに解決がなされてしまうがゆえに、再び借り入れを繰り返してしまう方がいらっしゃるのも事実です。
すべての借金が免責され、支払いがなくなった場合でも、再び多重債務にならないように、家計や支出の見直しをきちんと行っていくことが大切です。